初めての水草アクアリウム

二酸化炭素の添加

二酸化炭素の必要性

植物の栽培においては、窒素、カリウム、リンが三大栄養素と言われ、そのために植物にとって最も重要なのはこれらの栄養素であると考えがちですが、これらの栄養素は人間で言えば「おかず」に当たります。

植物において、人間にとっての「ご飯」に当たるのは、光合成から得られるエネルギーです。 光合成に必要なのは、光と水と二酸化炭素です。 魚やエビ、バクテリアなどの生物の呼吸で二酸化炭素は発生しますが、水草水槽のように大量に水草を密植すると、飼育水に含まれる二酸化炭素は枯渇してしまいます。

二酸化炭素を添加しなくても育つ水草も多いですが、光合成の気泡を確実に見たいときには、二酸化炭素を添加するのが無難です。

二酸化炭素の添加方法

二酸化炭素は普通は、二酸化炭素の詰まったボンベを入手し、レギュレーターで二酸化炭素の流量を調節して水槽内に添加します。 ボンベは、アクアリウムのメーカーが発売している小型のものを購入したり、業務用の大型ボンベをレンタルしたりします。

しかし、アクアリウム用の小型のボンベは割高で、他方、業務用の大型ボンベは二酸化炭素1グラム当たりの価格に換算すれば安価ですが、入手が面倒なうえに高圧ガスなので扱いには注意が必要です。

自分で作ろう二酸化炭素

そこで、コストを抑えるために、二酸化炭素は自分で作りましょう。 二酸化炭素の製造に必要な原料は、砂糖、イースト菌、水の3つだけです。 イースト菌はスーパーの製菓コーナーで売られています。

他に必要なものとしては、1〜2リットル程度の容量のペットボトルと、エアチューブ、エアストーン、ボンドです。

二酸化炭素の作り方

作り方は、ペットボトルに砂糖と水を入れて、そこにイースト菌を加えるだけです。 砂糖の使用量は、1リットルのペットボトルで300グラムぐらいでしょうか。 適当で大丈夫です。

この際の注意点は次の通り:

  • 水道水に含まれている塩素でイースト菌が死ぬかもしれない(死なないかもしれませんが)ので、浄水器を通した水、あるいはアクアリウム用のカルキ抜きで塩素を中和した水を使いましょう。 イースト菌も微生物なので生き物です。
  • 冬には水が冷たいので、40℃程度にまで温めた水を使いましょう。 冷たい水を使うと、いつまで経ってもイースト菌が活性化せず、二酸化炭素が発生しません。

二酸化炭素を添加する道具

しかしながら、この二酸化炭素ウォーターを作る前に、二酸化炭素を水槽に添加できるように、予(あらかじ)め準備をしておくべきです。 必要な準備は次の通り:

  1. ペットボトルの蓋に穴を開けて、そこにエア・チューブを差し込む。ペットボトルで作られた二酸化炭素が、このエア・チューブを通って水槽内に送り込まれるわけです。
    蓋に穴を開ける方法
    まず、穴を開けたい場所に釘(なるべく太いものが良い)を打ち込み、釘を引き抜きます。 こうして出来た穴にプラスのドライバーをあてがって、グリグリと穴を広げます。 エアチューブをギリギリで差し込めるくらいにまで広げます。広げ過ぎに注意。
  2. ペット・ボトルの蓋のエア・チューブを差し込んだ部分をボンドで固める。

    二酸化炭素をエア・ストーンから出すのにある程度の気圧が必要で、ペットボトルからエア・ストーンに至るまでの間で二酸化炭素が漏れないように密閉しておく必要があるためです。 水糊は乾くと縮んで隙間ができるのでボンドでなくてはなりません。
  3. エア・チューブの反対側の端にエア・ストーンを取り付ける。
  4. エア・ストーンを水槽内の水流の強い場所に設置する

ペットボトルは特に耐圧仕様の(炭酸飲料に用いられる)ものである必要はありませんが、最近流行りのペラッペラの飲み難くてけしからんタイプのものは避けたほうが良いかもしれません。

拡散器かエアストーンか

一般的に、水草水槽への二酸化炭素の添加には CO2専用のCO2拡散器(ディフューザー)を用います。 専用の拡散器を用いると、エアストーンよりも細かく美しい泡が出ます。

CO2拡散器も10年ほど前に比べると扱うメーカーが増えて値段も下がっているのですが、イースト菌を利用した発酵式の二酸化炭素添加では、ボンベに比べて二酸化炭素の気圧がはるかに弱いため、CO2ストーンなどの拡散器では、二酸化炭素を拡散器から出すのに苦労する恐れがあります。

そのため発酵式の CO2添加ではエアストーンを使用するのも良いと思います。 値段も安いですし。 エアストーンから出る気泡は拡散器の気泡に比べて大きく不恰好ですが、水槽内の水流の強い地点に設置することで、十分な CO2添加を得ることができます。

エアストーンの中でお勧めなのは下掲の「いぶきエアストーン」です。 CO2ストーンよりは二酸化炭素の気泡が大きいのですが、エアレーション用のエアストーンの中では気泡の細かさが最高クラスであり、水流の強いエリアに設置すれば、十分に二酸化炭素を溶け込ませることができます。

CO2添加量の測定

CO2の添加量の測定には、バブル・カウンターという器具が用いられます。 バブル・カウンターは二酸化炭素の発生源と拡散器とをつなぐエアチューブの途中に設置します。 バブル・カウンターの中には水を入れます。 その水の中を二酸化炭素発生源から出てきた二酸化炭素が気泡となって通過してゆくので、そのペースから二酸化炭素の発生量(添加量)を判断します。

二酸化炭素の添加量は「1秒あたり〜滴」という風に表現されます。

私はバブル・カウンター使っていません。 水槽まわりがゴチャゴチャするのが嫌ですし、イースト菌で二酸化炭素を作る場合には、ボンベで添加するのと違って、CO2の量を思うようにコントロールすることが出来ないうえ、二酸化炭素ウォーターのライフステージ(作ってから経過した日数)によって発生量が変化するからです。

エアストーンから細かい泡が出なくなった場合の対処法

エアストーンから出る泡が、細かい無数の泡の代わりに大きい泡がぽこっぽこっと単発的に出るようになってしまった場合には、エアストーンを一旦水中から引き上げて一晩空気中で干すことで、また小さな泡が出るようになるはずです。

大きい泡しか出ないというのは多分、エアストーンの中に二酸化炭素が通る特定の経路が出来てしまって、二酸化炭素がそこばかり通っているのだと思います。 エアストーンを干すことで再び細かい泡が出るようになるのは、エアストーンを水から引き上げることによって、その経路がリセットされるからではないかと推測しています。

冬季など、ペットボトルで作られる二酸化炭素の量が多くない場合には、干したエアストーンを水中に戻しても、再びエアストーンから泡が出るようになるまでに数時間を要することがあるので、その時間を考慮して、翌朝ライトが点灯する頃に泡が再び出始めるようにすると無駄がありません。

二酸化炭素の強制添加にはご注意を

二酸化炭素の強制添加とは、フィルターの内部やあるいは、吐出口近辺で二酸化炭素を添加し、強い水流を利用して、二酸化炭素を水に溶け込ませることを言います。

強制添加では、単に拡散器を水流の強いエリアに設置するのとは段違いに、効率よく二酸化炭素を添加させることができます。

しかし、それは裏を返せば、二酸化炭素が必要でない消灯時にも、大量の二酸化炭素が強制的に水槽内に送り込まれているということになります。

水中の二酸化炭素が消費されないままに後から後から二酸化炭素が送り込まれると、PHが極度の酸性に傾いて生体や水草に悪影響が出たり、生体が二酸化炭素中毒になる危険があります。 小型水槽は水量が少ないため、この危険性が特に大きくなります。 加えて、発酵式の二酸化炭素装置では二酸化炭素の添加量をコントロールするレギュレーターもタイマーも使用しないので、昼間と変わらない量の二酸化炭素が夜間にも添加されることになりかねません。

二酸化炭素が水に溶け込む量は、エア・ストーンから出る気泡のサイズが小さいほど、水深が深いほど、そして水流が強いほど増加します。

夏場と冬場

イースト菌は生き物なので、温度が高いほど活動が活発になって多くの二酸化炭素を生産します。 逆に冬場は、暖房の無い部屋に置いておくと二酸化炭素を作らなくなります。

冬場

冬場には、水温管理に紹介しているパネルヒーターをペットボトルの底に敷くと良いでしょう。 そして、パネルヒーターの熱が逃げないように、ペットボトルの下部とパネルヒーターを覆うようにして、ぐるっとタオルを巻く。 このようにすることで、気温が低い冬場にも2酸化炭素が作られるようになります。

わたしは、水槽からちょっとはみ出ているパネルヒーターの上に、二酸化炭素のペットボトルを置いています。 そして、水槽を消灯する1時間くらい前にはペットボトルをヒータの上からどかします。 こうすることで、二酸化炭素の不要な夜間に二酸化炭素が作られる量が抑えられます。

水草も夜間には呼吸をする
水草(だけに限らず植物全般)は夜間には、水中から酸素を取り込んで二酸化炭素を出します。 つまり動物と同じ呼吸をするわけです。

昼間にも水草は同じように呼吸をしていますが、呼吸で必要とする以上の酸素を光合成で作り出すために酸素は不要ですし、呼吸で生じた2酸化炭素を自分の光合成に用いるために二酸化炭素を出しません。

夏場

逆に夏場には、凄い勢いで二酸化炭素が作られて、冬よりも短い期間で二酸化炭素ウォーターの寿命が尽きてしまいます。 これを避けるためには、二酸化炭素ウォーターを作るときに小さじに1〜1/5杯程度(季節や二酸化炭素ウォーターの量によって異なる)の重曹(ベーキングパウダー)を混入します。 重曹によってイースト菌の活性が抑えられて、二酸化炭素の発生がゆっくり進むようになります。

重曹が多すぎると、イースト菌の活動が抑えられるのに留まらず、おそらくイースト菌が死滅してしまい、そうなると(そこは最早イースト菌の生存できる環境ではないため)その二酸化炭素ウォーターは捨てるしかないので、入れ過ぎには注意しましょう。

「重曹を入れるのは面倒だし二酸化炭素の過剰生産も気にならないが、二酸化炭素の過剰添加による生体への影響だけは心配だ」という人は、消灯の1時間ほど前にエア・ストーンを水面近くで水流の弱いエリアに移動する(チューブはキスゴムで固定)か、あるいは夜間にのみ強めのエアレーションを行って二酸化炭素を水中から追い出すようにすると良いでしょう。

水草が光合成を行う昼間には、夏であっても過剰添加の心配はないと思います。よほど大きなペットボトルで大量に二酸化炭素を作っている場合は別ですが、水草がたっぷり植え込まれていて光量も十分な水槽で、二酸化炭素を2Lくらいまでのペットボトルで作り、エアストーンを用いて添加しているのであれば昼間は大丈夫でしょう。

二酸化炭素ウォーターの寿命

イーストは、砂糖と水から二酸化炭素とアルコールを作りますが、アルコール濃度が一定以上(15%くらいかな)になると活動できなくなります。

ですので、イーストのエサである砂糖が尽きるか、あるいはアルコール濃度が高くなると二酸化炭素は作られなくなります。

つまり、水に対して砂糖が多すぎると、砂糖が残っているのに二酸化炭素が作られないというモッタイナイことになってしまいます。 なので、二酸化炭素ウォーターの寿命(というか、二酸化炭素の生産総量)は究極的にはペットボトルのサイズに制限されることになります。

白く濁っている二酸化炭素ウォーターが透き通った感じになり、底のほうに堆積物が形成されてきたら、そろそろ寿命です。

寿命が尽きたボトルも、シェイクすることで数瞬だけ二酸化炭素が出ます。 1分ももたないので、あまり意味はありませんけどね。
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