初めての水草アクアリウム

水槽のセッティング

アクアリウムに必要な設備は、生体を買いに行く前に用意しておきます。 設備と生体を同時に買うのはトラブルの元です。

水槽設備のセッティング

  1. 水槽を所定の位置に置きます。底面ヒーターを使用する場合は、ヒーターのセットも忘れずに。
  2. 底砂を半分(底砂を4cmの厚さにするつもりなら2cmまで)入れて、初期肥料を投入し、そこに水を少し入れて混ぜます。
  3. 初期肥料と底砂が十分に混ざったら、その上を残り半分の底砂で覆います。 このようにすることで、肥料が飼育水中に溶け込みにくくなります。
  4. 底砂を入れ終えたら、フィルターとヒーター、照明器具をセットします。 フィルターとヒーターの電源はまだ入れてはいけません。 ヒーターが空気中に出ているときにスイッチをオンにすると200℃程度にまで温度が上がるそうです。
  5. 水槽に入れる水を用意します。 水槽に入れる水といっても塩素が抜けていれば良いので、カルキ抜きを使用するか、家庭用の浄水器を通した水を使用するだけです。 汲み置きした水を日光に当てるとか、水を沸かして冷ますなどの方法もありますが、安価なカルキ抜きを使用する方がずっと楽です。 わたしは浄水器の水を使用しています。
  6. 用意した水を注ぎます。 水を普通に注ぐと、どんなに静かに注いでも底砂が掘れてしまって、せっかくの二層構造が崩れてしまうため、底砂の上にお皿を置いて、静かに水を注ぎます。 水位についてですが、ショップでは水槽の高さ一杯まで水を入れていたりしますが、水槽の高さの7割程度にとどめて置くのが安全ではないでしょうか。
  7. 水中のゴミが気になる場合には、水換えをしてもよいでしょう。 水槽の水を全部換えるもよし、2/3程度だけを換えるもよし。 水を全部換えて入れ直す場合には、水を注ぐときに再びお皿を使用しましょう。
  8. 水槽に水を入れ終えたら、フィルターとヒーターのコンセントを入れます。 これで水槽設備のセッティングは一応終わりです。 二酸化炭素の用意は、水草を植えてしまってからでも良いでしょう。
塩素を抜いた水を使用して、水槽水の濁りがなくなり、水温が20℃を超えれば、いちおう生物が住める水になります。

エビを入れる予定のある水槽に、農薬の使われている、またはその疑いがある水草を使うとき(「エビと農薬」を参照)には、水草を植えた後に水換えを繰り返して、農薬が完全に抜けた頃を見計らって、エビを投入しましょう。

したがって順序としては、水草 → 魚 → エビという順序になります。 水草を植え終えた後に水が澄んだら魚は投入できますが、水草と魚は同時に買わない方が良いでしょう。 水草を植えている間、魚たちには暫定的な容器で待っていてもらうことになり気もあせりますから。

初めてやるアクアリウムでは特に、水草を植え終えてから魚を買いに行きましょう。エビはさらにその後。

水草の植え込み

水草を植え込む手順

  1. 水草を買います。 ショップの店舗に足を運んでも良いですし、ネット通販でもよろしい。 ネット通販は送料がかかりますが、在庫の回転が早いため状態の良いものを入手できる傾向にあります。 種類も多少豊富かもしれません。

    水草は、少しずつ買い足してちびちびと植えていくのではなく、最初にまとめて買って水槽全体に植えてしまいます。 一度に大量の水草を投入することで、藻類の発生を抑えることができます。

    「ヘアーグラスなどの前景草だけを前面に敷き詰めるつもりだけど、たくさん買うと値段が高いし植えるのも面倒だから、少しだけ植えて自然に増えるのを待とう」というような計画は必ず水槽がコケだらけになって頓挫するので、こういうときにも、とりあえず空いたスペースに安価な有茎草を植え込むことをお勧めします。

  2. 買ってきた水草はまず、余分な部分を切り落とします。 有茎草であれば植えるのに長すぎる部分を切り落とします。 根の部分を全部切り落としてしまっても構いません。 タンポポのような形状のロゼット型の水草は、根をほどほどに残して長過ぎる根だけをカットします。
  3. カットの済んだ水草を洗います。 藻類やスネールなど、水槽内に持ち込みたくないものに注意して、出来るだけ取り除きます。 洗浄に使うのは、水槽の水の方が良いかもしれません。 塩素の入った真冬の冷水などで洗っても藻類はどのみち殺菌できず、逆に、クリプトコリネなどデリケートな種類の水草だとダメージがあるかもしれないからです。
  4. 洗い終えた水草を水槽内に植え込みます。 水草の植え込みにはピンセットを使用します。 水草専用のピンセットでなくても良いですが、先端に滑り止めのギザギザが刻み込まれていないものが使い易いです。(ギザギザがあると、水草を植えてピンセットを引き抜くときに、水草がギザギザにひっかかってピンセットと一緒に底砂から抜けてしまいます)

レイアウト

水草レイアウトにおけるオーソドックスな原則は次の3点くらいでしょうか:
  1. 丈の低い水草を前に、丈の高い水草を後ろに植える。
    一番初歩的な原則であり、それだけに一番最初に卒業しやすい原則でもあります。 丈の低い水草を丈の高い水草の後ろに植えると、丈の低い水草が見えなくなってしまいます。 しかし、丈の高い水草の横や隙間から丈の低い水草が少しだけ見えるようにして植えたりすることで、自然な奥行き感を出すことが出来ます。
  2. 1:1.618という黄金比率を用いる。
    黄金比率を用いると、人が本能的に心地よいと感じる風景になります。 1:1.618という比率は、パーセンテージに換算すると、およそ38%と62%という比率になります。

    したがって、例えば水槽の横幅を、38%と62%に区切って、水槽の左端から38%の地点まで有茎草を植え込み、そこから右端までの残り62%に前景草を植え込むと、水槽を真正面から見たときには、有茎草のエリアが1に対して前景草のエリアが1.6という黄金比率が成立し、人の美的感覚に訴えかける古典主義的な美しさが得られるというわけです。

    この黄金比率という技法は、水槽を正面から見たときの水景だけでなく、横から見たときの水景にも用いると良いでしょう。 さらに、1:1.6という比率は、有茎草と前景草の対比だけでなく、緑系水草と赤系水草のような色の対比、あるいは形状の対比(バリスネリアとロタラなど)、水草を植える空間と植えない空間との対比にも適用できます。 水槽内に流木や岩を設置する場合にも、端から38%の地点に置くと良い感じになることと思います。

  3. 使用する水草の種類を抑える。
    服装などのファッションでもそうですが、色の数が少ないほど組み合わせが簡単で、無難な成果を得やすくなります。 色数の多い複雑なファッションは、上手に組み合わせることが出来れば見事な効果を得られますが、色数が増えるほどに高水準の経験やセンスが要求されることになります。

    したがって例えば極端な話、30x30cmの小型水槽に100種類の水草を使用したレイアウトを作るよりも、1種類だけの水草を使用する方が、良いレイアウトを作りやすいわけです。 1種類だけの水草を使用すると単調な風景となりますが、それでも100種類の水草で雑然としているよりは審美的に許容範囲の風景となる可能性が高くなります。

    もっと現実的に3種類の水草と10種類の水草で比較しても、レイアウトの上手な人であれば10種類の水草を使用しても素晴らしい水景を作り上げるでしょうが、平均的な初心者が10種類も用いると雑然とした水景になりがちです。 それよりも3種類に抑えた方が見ていて心地よい水景になると考えられます。 群生している植物には「群生美」が備わりますが、水草の種類を抑えることによって、水景に群生美が備わる確率が上昇するのです。

    小型水槽の場合、使用する水草の種類はとりあえず5種類以内程度にすると良いでしょう。

植えた後の経過

植え込んだ水草が順調に生育しているかどうかは、光合成の様子や新芽の展開具合から判断します。 水草は底砂に根付くと、日中には光合成による酸素の気泡を出しますし、(水草の種類にもよりますが)意外なほどの早さで新芽を出します。

有茎草の場合には、就眠運動からも水草の健康状態を判断することが出来ます。 健康な有茎草は照明の消えた夜間には葉を閉じて眠り、明るくなると光合成のために葉を広げるという行動を示します。 ところが、劣悪な環境で放置されていてギリギリの状態で生きている水草(あるいは根元のほうの古い葉)では、この就眠運動が行われず、ずっと葉が開きっぱなしになります。

就眠運動を確認するのは、水槽の照明を消した直後ではなく、朝に照明が点く前が良いでしょう。 (24時間タイマーを使って)毎日一定の時間に照明の点灯と消灯を行い続けて就眠リズムがすっかり確立されてしまえば、水草も消灯する少し前から葉を閉じ始めるという可愛らしい仕草を見せてくれますが、水槽に植え込んでから日が浅くてリズムがまだ完全に確立されていいうちは、健康状態に問題が無くても消灯直後ではまだ葉を閉じないことがあるためです。

二酸化炭素も光量も十分であるはずなのに水草が生長しない場合に、まず考えられるのは水温が低過ぎる可能性です。 例えば、真冬の木造住宅でパネルヒーターでしか保温していない場合には、水温が20℃前後にまでしか達しないことがあります。 この水温でも枯れる水草は無いと思いますが、成長の速度は明らかに遅くなります。

レイアウトが整っていれば水草の成長が遅くても気になりません(むしろトリミングの手間がかからないので楽)が、水草を植えたばかりのとき、特に水草水槽を始めたばかりのときには、直ちに水草の生長を楽しみたいのが人情ですから、そのようなときには水温を25℃くらいまで上げてみると良いでしょう。

真冬の水温を上げる方法としては、パネルヒーターと普通のヒーターを併用する、水槽に蓋をする、水槽を鑑賞するとき以外は発泡スチロールで囲むなどが考えられます。

水温以外で、良好な環境にあるはずの水草(それも水質にうるさくないとされている種類)が育たない場合には、アレロケミカルが原因である可能性も考えられます。 しかし、例えば、水替えをせずに足し水だけで何ヶ月も放置し、枯れ草の溜まったような水槽でもなければ、水草の生長が阻害されるほどのアレロパシーの濃度にはならないでしょうから、設置したばかりの水槽で水草が育たないケースでは、アレロケミカルが原因であるということは考えられません。

生体の投入

水草を植え終わって何日か経って水槽内に落ち着いた感じが出てきたら、生体を投入することができますが、投入した生体を死なせないためには水合わせというものが必要になります。

自分の水槽の水とショップの水槽の水の水質が同じであれば水合わせは不要なのですが、底砂の種類や、二酸化炭素の濃度によって PH が大きく異なることがあります。 魚を通信販売で買う場合、自宅とショップで水道水の水質が異なることも考えられます。

PHが急激に変わると魚もエビもPHショックで死んでしまいます。 このPHショックを防止するために、少しずーつ新しい(自分の水槽の)水に魚やエビを慣らしていくことを「水合わせ」と言います。 水合わせは次の手順で行います:

  1. ショップでビニール袋に詰められた魚やエビをバケツに放します。 このとき、バケツの水量が少ないように思っても、バケツに入れて良いのはビニール袋に入っていた水だけです。 水道水や水槽の水を入れてはいけません。
  2. エアチューブの一方を水槽内に入れ、そちら側をキスゴムなどで固定します。 多少割高になると思いますが、水合わせキットを利用しても良いでしょう。
  3. エアチューブのもう一方の端からバケツに飼育水を滴らせるのですが、こちらの側を軽く結びます。紐を結ぶように輪にして軽く結んでおきます。
  4. そして、おもむろにチューブに口を付けて水槽内の水を吸います。 水がチューブの口側の方にまでやってきたら吸うのを止めて、チューブの途中を指で挟んで水の勢いを殺しつつ、チューブの端をバケツに降ろします。 そして間を置かずに、先ほど作っておいた輪をきつく締めます。
  5. 輪をきつく締めると、チューブから出てくる水が、ポツリ、ポツリと滴る程度になるはずです。 数秒に一滴程度のペースになったら一安心です。 このペースが速いほどリスキーで、遅いほど堅実です。

    バケツに入っている水の量、魚やエビの種類に応じて輪のきつさを加減して、バケツに滴る水の流量を調節します。 バケツに入っている水の量が少ないほど、そして魚やエビの種類がデリケートであるほど、水槽からやって来る水一滴のインパクトが大きいため、流量を少なくします(3秒に一滴程度が最も安全だが、時間がかかり過ぎる)。

    水槽から流れてきた水でバケツの水量が倍くらいにまで増えたら、少しペースを速めます。

  6. 数時間してバケツの水が増えてきたら、味噌汁の器などの容器を使って、バケツから水槽に少し水を戻します。
  7. 何度もこういうことを繰り返して、もうそろそろいいかな? もういいんじゃないかな? もうさすがにいいだろう。 もう待ちきれないな。 もう十分だよ。 ぼくもそう思うよ。 私も。 わたしもそう思う! という気分になってきたら、エアチューブの結び目をほどきます。 すると、チューブから水が勢いよく出始めます。
  8. バケツから水があふれ出ないようにバケツの水を忙しく水槽内に戻すことを繰り返して、バケツの水がもはや水槽の水とまったく同じだと思ったら、水合わせが完了です。
水合わせに必要な道具をまとめておくと、バケツエアチューブキスゴムの3つです。 冬にバケツ内の水の水温が低くなり過ぎる場合には、ヒーターもあると助かります。

水合わせが済んだら、バケツ内の魚やエビを水槽に移します。 水槽に移すには、ネットや、味噌汁の器、手の平など自分が使い易いと感じる道具を使います。 できれば、生体はネットですくうよりも、味噌汁の器や手の平などで水ごと生体を水槽に移動するほうが、生体へのダメージが少ないでしょう。

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